きみに守られて

母、宏美が二人を食卓へ誘いにきた。
ドアのノックが優しかった。
ドアを優しくノックできる人間は
尊敬されるべきだと思った。

久美子と優里は
先にテーブルに付き、
なにやら
与一郎の冗談に耳を傾け

「つまんな~い」とか
「笑えな~い」と、
二人は娘パワー全開で笑っていた。

暖かい家族の空気が
絶え間無く流れる空間である。
洋風の居間に対して食卓は
純日本風であり、
おかずの種類が多くユリツキは緊張した。

豆腐半丁で三膳の飯を、
二畳の部屋で一人で食う生活を
幼い頃からおくって、
東京へ上京してからは
コンビニの弁当か、
せいぜいラーメン屋程度で
生活をしてきた人間には
特別な場所に見えた。

かつて優里と同居生活を始めた、
あの2LDKのアパート暮し初日に、
優里にとっては
質素すぎるであろう手料理に、
ユリツキは大粒の涙を流して食った。

”美味しいです、美味しいです”と
大きな肩を振るわせて泣いていた。

そんなユリツキを見て
優里もつられて泣いた。