とりあえず、そうっと右に10センチずれてみた。 でも、手はついてくる。 こみ合った車内では、動くのももう限界で。 …先生。 祐輔。 こういう時、先生がいれば安心なのに。 かたく目をつむった。 じんわりと涙がにじむ。 助けて、 先生…! その時、 「おい、おっさん。いつまで触ってるんだよ」 あの時の先生のようなセリフが聞こえた。 あたしのすぐ後ろ、左耳に響くように。 それと同時に、不快な手の感触が消えた。 …なに、 誰…?