「行ってきます!」


通い慣れた道を走って駅に向かう。



佐野先生と結婚して、高村(たかむら)千沙から佐野千沙になったにも関わらず、

あたしは高村の家で暮らしている。



駅が近づき、いつもの改札そばの柱に佐野先生が寄りかかっているように見え、

あたしはうれしくなった。



でも、すぐにそんな姿がないことに気づく。


…幻?



そうだよね。いるわけない。


あたしと先生は一緒に通うのを止めたんだから。



さすがに、3年間も先生と登校なんて普通じゃない。


結婚がばれないように、怪しいと思われる行動は控えようってなったんだ。



でも、ずっと一緒だったから、一人なんて慣れないよ。



あたしは寂しく思いながらも、電車に乗った。