「ユマ~」


話をしていると教室のドアの方に男子1名。
ユマさん指名。

もしかして、あれが?


すぐに駆け寄っていくユマの様子を見るとこれは確実だな。


そっか、でも結構かっこいいな。いいな~。
ていうか、ラブラブだね。

今まであたしが気づかなかったのがきっと鈍かったんだな。


さてと、あたしは今日1人で帰るのか。

カイロもってきて良かった~。
キミがいないとあたしは今日帰れなかったよ。

カイロくんはあったかいし、いつでもうちのそばにいてくれるし、人間だったらきっといい彼氏。

小川なんかあったかいだけの不良品。


心は氷のようにつめたいですしね。


ポケットから出したカイロをぎゅっと握る。
まどの外では空いっぱいに広がる雲があたしの気分をますます悪くした。



―――放課後。

「じゃあね、椎名」


ユマは彼氏と腕くんじゃって仲良く下校中。

あたしは教室に残ってその様子を窓から伺っていた。

窓のすぐ近くの木から残り少ない木の葉が落ちてく度、外の風の強さにゾッとする。
こんな日に1人でなんて。


…気が付けばあたしは小川がいないとだめな人になっちゃったんだ。

だって去年まではカイロとかでなんとか過ごしてたもん。
今年は、もうアイツがいないと室内から出れないなんて。