『では、これですべての方の紹介が終わりましたね?さあ皆さん、お次はお待ちかねの、お披露目タイムです!他のテイルズと主人達の交流を深めちゃってください!』
司会の言葉で、イスに座っていた皆がいっせいに立ち上がり、あちらこちらのペアに挨拶をしに歩いた。
・・・で、僕はというと、案の定、あっという間に周りを囲まれていた。

『わ~!あなたがあの伝説の黒牙様の血を受け継いだお方ですか!お会いできて光栄です!』
「あなたは確か・・・大鼠(オオネズミ)族の『チャイ』さんですね?」

僕がそう答えると、チャイは顔を真っ赤にして、

『お、覚えていただいてたんですか?ありがとうございます!』

と、嬉しそうに言うと、主人のもとにすごい勢いで走っていった。

それから、同じような会話をたくさんのテイルズとしたが、しばらくたっても僕の周りからテイルズたちが離れる気配が無かった。
(つ、月影・・・。なんか僕・・・疲れてきた・・・)

月影にそう訴えると、

(疲れ?・・・いけませんね・・・。やはり始めの夜にしては時間が長すぎましたか・・・)
と返してきた。

(どういうこと?)

(・・・ご主人はまだ、夜のテイルズたちの放つ魔力に慣れていないんです。この魔力というのは、ただの人間には毒みたいなものです。いくら月影様の血が流れているといっても、まだ魔力を上手く扱えないご主人にとっては、多少の毒になります。)

月影の説明を聞いてる間も、だんだんと疲れは大きくなっていた。

今は意識を保つのが精一杯だった。

月影もそんな千影の様子を悟って、早くこの場から離れねばという思いが強くなっていた。
(一刻も早く帰らねば・・・)

そう思った月影は、司会に向けてこう言い放つ。

『我が主はお疲れになっている。ライザ、我らは先に帰らせてもらうぞ。よろしいかな?』
司会のライザも、千影の様子がおかしいと感じていたため、月影の願いをすぐに聞き入れた。

『はい。もちろんです』

月影はその言葉を聞くと、すでに意識が途切れ途切れになっている千影とともに、その場から消えた。