言われるまま、手を差し出した。

『そのまま、魔力を手のひらに集めてください』

――・・・はい?魔力を集める?

「・・・どうやって?」

『黒牙様とご主人の本能が導くままに・・・』

そんなこと言われても・・・と思ったが、脳から神経を伝い、魔力の使い方が理解できた。
全身の力を手のひらに集める。

『そうです。そのまま、行き先を告げてください』

《我の魔力のもとに許可する。行き先は「ディグ」。我らを導け、闇の者よ》

自分のものではないようなしゃべり方を普通にしていた。

自分のものではないような声が出た。

・・・これが・・・黒牙の力・・・。

選ばれしものの・・・力・・・。

『さあ、扉が来ますよ』

月影の弾んだ声。

手のひらに集めた魔力を自分の足元へと放ち、扉の入り口を作る。

間も無く、赤と黒のチェック模様のような四角い扉が出現する。

『行きましょう』

月影は僕の肩に飛び乗った。

「うん」

先程とは違う方法で魔力をため、固めて、扉の中央部にあるくぼみに、魔力の結晶をはめ込んだ。

―ギギギィ・・・。

音を立てて開いた扉に足を踏み入れると、一陣の風が頬をかすめた。