『尻尾をつけたところを見てみてください』

レイブンが静かに言う。

――・・・これは!?

僕に尻尾が生えていた。

何かでくっつけているのではなく、素肌から。

僕の体から尻尾が生えていた。

『やはり、わたしの真の主人はあなたでしたか』

レイブンが嬉しそうに言った。

「やはり?」

『はい。その尾が同化したということは、あなたに化け猫の血が流れているから。しかもその尾は、最強の闇の支配者と言われた、我ら化け猫族の「黒牙(コクガ)様」のものです。黒牙様の力が宿る人間は、千年に一人といわれています。あなたは闇の支配者に選ばれし存在です』

月影は目を輝かせてそう語ってくれた。

だが、僕自身はそんな話、急に言われても信じられなかった。

自分がそんなにすごい存在だなんて、誰がそうやすやすと信じられるだろう?

「選ばれし存在・・・。僕が?」

『えぇ!』

月影はニコリと笑った。

――・・・僕なんて、一生目立つことなく普通の人生を送りそうな人間ランキングナンバーワンだと思ってたんだけどな・・・。
「・・・そういえば、時間大丈夫?もうかなり立ってるんじゃない?」

『その点はご心配なさらず。魔力で時間をゆがませて遅れさせてますから』

そんなことも出来るんだ・・・と、ちょっと感心した。

『10時55分になりました。では、転送を開始します。ご主人、手を』