名?

名前?

・・・あるじゃないか。

前のご主人とやらがつけたという、「セスラ」という名が。

「・・・何のこと?」

『・・・我ら魔族は、2種類ある。個々や集団で闇を支配しようとする者、「グレイズ」と、ニンゲンの主人を見つけて闇を支配しようとする者、「テイルズ」。我は「テイルズ」の者であるから、主人となるお主を探し出した』

なんで僕を主人に選んだのか。

その理由は分からないが、とりあえず、聞きたいことはそれじゃない。

「で?なんで僕がお前に名前をつけなきゃならないんだよ?名前なら、お前の前のご主人とやらがつけてくれたんじゃないのか?」
『それはあくまで前のご主人のときの名だ。今はもう主人ではないあいつがつけた名など無意味。力を持たない』
「力?名前に力があるの?」

『我ら「テイルズ」は主人が名を与えることによって、強大な魔力を手にすることが出来る。・・・主人が名をくれることは、契約と同じだからだ。契約すると、主人が持っている魔力と、わしら魔族の魔力が共鳴し、力が発生するのだ』

「ちょっと待った。魔力?僕に魔力がある覚えはないけど?」

『・・・おぬし自身が知らんかっただけで、おぬしが生まれたときから、おぬしには魔力が宿っておった。じゃからわしと話が出来るのじゃ』
「ふーん・・・」

『・・・で、名のほうは・・・くれるか?』

恐る恐る・・・と言った様子で、僕の足元に歩み寄ってきた黒猫は、とても小さく見えた。
「・・・いいよ」

なぜか、素直にそう言っていた。

『ほ、本当か!』

黒猫は、とても嬉しそうに、そう言った。

「じゃあ、今日からお前の名前は・・・『月影』!」