慧が出て行くと急に桃華さんが振り返った。
その時の目つき。
今でも思い出すと恐怖を感じる。
「やっぱり、慧が好きなんじゃない。」
「は?」
「私が彼女なの。前は貴方の彼だったかもしれないけど、今は私の"モノ"よ。」
"モノ"…?
彼女は慧をそういう風に見ているんだ。笑える…腹立つ気にもならない。
「なんで知ってんの?私と慧が付き合ってたって。」
「慧と初めて会ったときに聞いたわ。嬉しそうな、悲しそうな、そんな顔である女性(ヒト)のことを話してんの。貴方に会った時すぐに分かったわ、貴方がその女性(ヒト)だってこと。」
「………」
「だから私は…私はアンタが嫌いなの、」


