俺が大人になった冬

「なんだよ、それ……昔の男かなにかかよ?」

俺の質問に、彼女は無言で首を横に振った。

「じゃあ誰だよ!?」

きちんと聞くと言っておきながら、ショックのあまり思わず攻撃的な言葉が口から飛び出してしまう。

今まで俺に向けてくれた、温かい眼差しは、優しい笑顔は……全てそいつに向けられていたということか?

そんなこととは知らずに、彼女の優しさに癒され、心から彼女を求めていた自分があまりにも間抜けで、情けなく思えた。

彼女の言葉を待ちながら、鼓動が徐々に早くなっていくのを堪えるようにグッと机の下の拳に力を込める。

「……赤ちゃん」

「え?」

言葉の意味が理解できず、怪訝な顔で彼女の方を見る。

「私……」

彼女は緊張しているような様子で一瞬言葉を飲み込み、覚悟を決めるようにゆっくりと息を吸い込んだ。

「私、15歳のときに子供を堕胎(おろ)しているの……」