「じゃあ、またね」

「『また』っていつ?」

「電話するわ」

二子玉川のデパートの駐車場に車を停め、さっきまで激しく抱き合ったことなど周囲には微塵(みじん)も感じさせないようなシレッとした表情で、俺たちは別れの言葉をかわす。

「絶対連絡してきてよ」

俯き、抑えた声で言いながら、外からは見えないように助手席からゆっくり手を伸ばし、運転席のエリナの手をそっとなぞる。

「俺、エリナさんに会えなくなったら、死んじゃうよ……」

「可愛いこと言うわね」

「本当だから」

なんて……そんなこと、これっぽっちも思っていない。

俺はただ、金が欲しいだけだ。

エリナは俺より9歳年上の人妻。

俺たちはエリナが時間のあるときに会い、体を重ねる。

それだけの関係。