俺が大人になった冬

俺の視線に気づいたのか、こんな場所にいる数少ない男同士という妙な仲間意識からなのか、その男が

「小さいんだな。赤ちゃんって」

と突然声を掛けてきた。

「そうっすね」

シカトするのも悪いと思い、素直にそう返事をすると男はさらに

「こんな小さいの、抱くとき緊張するだろうな」

と、会話を続けてくる。

返事をして失敗したなと後悔しながら、仕方なしに

「まぁ……確かに」

と適当に返すと、男は

「実はね、このあいだ妊娠が分かったばかりでね。この歳になるまでいなかったから凄く嬉しくてさ。気が早いと笑うかもしれないけれど、早速赤ちゃんの服の下見に来てしまったんだよ。こんな小さな靴下を見てしまうと、なんだか急に緊張してしまうね」

と、見ず知らずの俺に対して、完全に浮かれた様子でマシンガンのように言葉を続けた。