「すいません」

「え?」

俺の声で女が振り返る。

その女の持つ独特の雰囲気に、俺は一瞬息を呑んだ。

透き通るような白い肌。

少し日本人離れした整った顔。

華奢な体つき。

でも、それは『美人』と言うよりはまるで『造り物』のような印象で……

「あの?」

声を掛けておきながら言葉を失っている俺に、不思議そうな顔で女が尋ねる。

俺はふっと我に返り、ちょっと混乱しているふうに見せながら用意していた台詞を口にした。

「あ、すいません。申し訳ないんですけど、ケータイを貸してもらえませんか? 話していたら充電が切れてしまって。じいちゃんの容態が……急ぎの電話なんです!」

「え!? あ、はい。どうぞ使って」

女は俺の言葉に慌ててエルメスらしきバックからケータイを取り出し、計算通りに俺に手渡す。