慣れない畏まった文体。

君、なんて他人みたいな呼び方。

けれど独特の文字は確かに見慣れた京平の字だった。

京平は一体どんな気持ちで手紙を書いたのだろう。

何を思ってポストに、

人前で歌うのは快感だった。

CDが売れれば売れる程安心した。

ああ、
私は求められている。
必要とされている。

そう思えたから。

たとえそれが、
使い捨ての、一時だけのものでも。
すぐに取って代わられるかもしれないものでも、
歌っている時だけは確かにそこには千夏の居場所があった。

CMになるたびに千夏の歌声がテレビ画面から流れてくる。

CDショップにもずらりと千夏たちのCDが並び、あっという間に千夏は有名人となった。