京平は白い毛布に包まれた赤ちゃんを見るなり号泣し、そして誰よりも喜んだ。

紅葉のように小さな手を握りながら「千雪」と呼ぶ京平はとても幸せそうで、
千夏はそんな京平を見て胸が苦しくなった。

千雪と名付けられたその子は、
千夏の1番の理解者であり、千夏の気持ちを1番にわかってくれた、
そしてその子の父である隆という、
実の妹を愛した彼に似ていた。

そして千夏は千雪を抱く京平を見て一つの決心をした。

京平から離れよう。

それは高校へ入学するときにも一度決めたことだったが、
今回はその時より更に強い気持ちで思った。

香織に言われたからなどでは決してない。

千夏が自分で決めたこと。

千雪という小さな命を置き土産に京平を残して去ろう。