体重も身長もあまり差がない京平と千夏だ。
京平は立ち上がるなりよろめいた。

『ちゃんとつかまってろよ。バット落とすなよ』

『…うん』

千夏は京平のバットをしっかり持った。

さっきまで京平と野球をしていた友達二人は千夏たちのことを見て冷やかしの言葉を発していたが、
京平はなんでもない風に『じゃあまたなー』
と二人に挨拶をして歩きだした。

この日は、千夏が初めて絶望した日になった。

京平が自分のお兄ちゃんだということに。

自分が京平の妹だということに。

絶望して、
心底嫌になったのに。

今でもその事実に縋っている。

兄妹の絆を利用して、
京平を我が物にしている。

京平の純粋な兄としての気持ちを千夏は利用していた。