そして、そんな食事の中、受信した一件のメール。

<食事が終わったら旅館の駐車場の前で待ってる>

千夏は驚いて少し離れた席の京平を振り返ると、
京平の意味深な笑顔が千夏に向けられた。

不安と緊張を抱えたまま、言われた通りに駐車場へと向かうと
澄んだ空気の中、
愛おしい人が待っていた。

京平は駐車場の前の電柱に背中を預け、ギターを抱えていた。

一目見ただけですぐにわかる。千夏が実家に置いて来た古びたギターだ。

「ちょっと、ついて来てくれ」

一メートル程離れた所から京平を見ていた千夏に気がついた京平はそう言って歩き出す。

千夏は杖を握締め、京平の後を追った。

京平は旅館の裏山に続く長い階段の前で立ち止まり、千夏に手を差し出す。

「おいで」