雪解けを迎えた街は、キラキラと輝いて、
澄んだ空気が千夏を包んでいた。

ギプスで覆われた右足を見つめて杖をつく。

頭の包帯は取れたものの、千夏には怪我の後遺症が残った。

「何やってんの」

千夏が小さな橋の上で、眼下に流れる川を覗き込んでいると、
橋の向こうに現れた慎太郎が千夏を呼んだ。

杖を離して橋の手摺りに繋がっていた千夏は顔だけ慎太郎に向ける。

「魚、探してた」

「あ、そ」

千夏の隣までやってきた慎太郎はにこやかに千夏の杖を手にして千夏の腰に手を回した。

「何、何のつもり」

「うちまでお送りしますよ。お姫様」

「…さぶっ」

千夏は露骨に嫌がって見せたが、
内心それ程嫌がっていないということは慎太郎も承知しているだろう。

二人並んで歩くのは、杖をつくより歩きにくい。

「…沖縄にはいつ帰るの?これが取れたら?」

玄関で靴を脱ぐため座り込んでいた千夏のギプスを指して慎太郎は首を傾げた。

「…さあ、まだ帰るか決めてないから」

素っ気なく答えて杖を掴む。