泣きじゃくる京平は涙で目の前が霞んで、
何もかもが朧げだった。

待ち望んだ千夏の目覚め。目覚めたら、
誓いの記しに、
そう思っていたのに、
現実はそう甘くなくて、

いざ唇を重ねようとしたら、
思いの外覚悟を要した。

そしてそれをあっさりと見破った千夏。

「京平は、私のお兄ちゃんなんだよね。永遠に…」

千夏の言葉が容赦なく降り注ぐ。

「…死ねなかったなんて…」

落胆したような、絶望したような千夏の言葉に京平は身を起こした。

力任せに千夏を引き寄せる。

千夏の身体は頼りなく、今にも壊れてしまいそうに思えた。

「死なせない。絶対、」

「京平は、気持ち悪くないの?」

こんなことを千夏に言わせる自分が許せない。

京平は千夏の顔を両手で挟み込み、
額を擦り合わせた。

「気持ち悪いわけねえっ。お前はどんなお前だって、俺の大切な…妹だ」

そう、
妹だった。

自分を異性として愛していて、
そのために命を投げ出そうとした千夏に応えようと、
女として愛そうと、
死ぬ程の覚悟と決意をしたはずだったのに。

どこまでいっても、
京平にとっては妹でしかなかった。

見れなかった。

「…頑張って好きになるものじゃなかったでしょ?キスは覚悟してするものじゃなかったでしょ?」

いつの間にか千夏の瞳からも涙が溢れていた。