「先輩!10円有難うございました」
電話が切れて数分後、王子はようやく私のいるところまで10円を持って現れた。
そして作られた綺麗な笑顔を私に向ける。
暑さも吹っ飛ぶ程の清清しい笑顔だ。
「いえいえ、じゃあ私は帰るから」
用事を終え、そのまま門の方に体を向けると、朝と同じように、私の背中に王子が話し掛けてきた。
「先輩、よかったらお礼にお茶でも」
やはり・・・
でも私はそんな手には乗らないよ・・・
面倒なことに巻き込まれるのは嫌だからね・・・
「私、今日は課題をやらなくちゃいけなくて」
「・・・そうですか・・・残念だなぁ・・・」
計画通りに事が進まなくて、俯いてしまう王子。
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