な・・・
さっきお茶を買うために500円玉を使ったせいでおつりとして100円玉と10円玉が数枚出てきた所を見られてしまった・・・
無いとは言えない・・・
だが、これを貸すと、さらに「今度返しに行きますね!」とかいう面倒な流れが生じてしまう・・・
いや、もはや10円くらい返してもらわなくてもいい・・・
「借りるね、先輩」
後ろから私の肩越しに細長い手が伸びてきて私の財布を奪い取る。
また、あの香水のいい香りがした。
「ちょっと!」
振り返って咄嗟に財布を取り替えそうとして、王子の足を踏んづけてしまい、一瞬体の平衡感覚が狂ってしまう。
思わず目を瞑ってしまった。
何かに支えられ、顔を上げるとそこには、満面の笑みの王子がいた。
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