「恭子さん、おはようございます!何買うんですか?」
しまった・・・
全ては笹田のせいだ・・・
あいつとさえ出遭わなければもう今頃私は冷たいお茶を買って教室へ帰ろうとしていただろう・・・
タイムロスだ・・・あのタイムロスに全ての原因がある・・・
「おはよう、篠原くん。何買おうかな」
なんて言いながら私は自動販売機にお金を入れ、一瞬の迷いも無くお茶のボタンを押した。
「あ、先輩、僕の名前知っててくれたんですか?嬉しいな~」
そう言いながら笑顔で腰をかがめて、親切にも私のお茶を取って差し出してくれる王子。
そんな王子に愛想笑いで会釈してそそくさと自教室へ向かう私の背中に彼が言う。
「あ、恭子さん、10円貸してもらってもいいですか?」
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