覚めない微熱だけ、もてあましながら

「うん、みかの弟ね。ちょっと、無愛想な感じの子」

……。

「何か、話しかけづらい雰囲気あるよなぁ……」

麻里は黙った。

“そんなのはどうでもいいよ。つーか夏野のこと詳しく話せよ”

イライラしながら携帯を耳に宛がう。

「今日、会ったよ」

「だから、さっき聞いたってば。会社の近くまで来たんでしょ?」

思わず声を荒げ、強い口調になる麻里。相手が愛子だからイライラするのも無理はない。

「違うよ。まこと君。まこと君に会ったんだよ。あ、でもすれ違っただけで話してないから、会ったとは言わないか……。ただ見かけただけかな」

「え? どこですれ違ったの?」

またしても口調が戻る麻里は、自分の耳を疑った。

平田まことに会った……いや、すれ違っただけ。と愛子は言っているがそれでも大変なことだ。なぜなら、麻里が次に考えているターゲットは、まことだったから。麻里が自ら罠を仕掛ける前に、二人は外ですれ違っていたなんて。