「……ふざけるな!そんなこと出来る訳が無いじゃないか!!」


声を荒げながら、夫は叫んだ。


娘の誘拐―――。


それは国連加盟国に歴訪した時、ニューヨークの街で起こった。


空の青い青い、晴れた日のことだった。


連日のように続くパーティ。


外交官の妻である私はパーティ同席のため、あの日もベビーシッターに娘のメイを預けていた。


娘が居なくなったとベビーシッターから連絡が入り夫と急いで家に帰った時、待ち構えていたようにかかってきた電話。


「警告する―――」


誘拐犯は淡々とそう言うと、『戦争行為を中断するように』呼びかける夫に対して『意義申し立て』を要求した。