桜の下で ~幕末純愛~

土方の部屋に向かう沖田。

途中で原田と藤堂を捕まえる。

「入りますよ」

と襖を開け、土方の部屋に二人を放り込んだ。

「「「…………」」」

沖田は三人の前に座ると口を開く。

「何故黙っていたのですか?」

藤堂が焦って答える。

「総司には知らせるなって言うからよぉ」

「総司、すまなかった。言い訳するつもりはねぇ。こっちの責任だ」

土方が真っ直ぐに沖田を見る。

「斬られた時の様子から順に話して下さい」

沖田が静かに言った。

土方が助けに行って見た所から熱を出して寝込んだ事、回復してきた事を話した。

原田と藤堂も看病中の様子を話す。

土方は桜夜に粥を食べさせた事だけは伏せた。

―確実に殺られる―

最後まで黙って聞いていた沖田。

全員が話し終わると

「桜夜を助けていただいて有難うございました。お陰であの子を失わずにすみました」

と頭を下げた。

沖田の発言に三人は固まった。

―こいつ、本気だ―

「何かおかしな事でも?」

三人はブンブン首を横に振る。

土方は粥を食べさせた事を伏せておいてよかったと痛感していた。

「では。私は戻りますね」

沖田はそう言って部屋を後にする。

沖田が去った部屋では、原田と藤堂が崩れ落ちていた。

「なぁ、総司の奴…」

「あぁ、ありゃあ、桜夜ちゃんに相当入れ込んでるな」

原田と藤堂が話している中、土方だけは何か考え込んでいた。

「おめぇら、用が済んだんだ。出てけ」

土方はそう言って二人を追い出した。

総司と稲葉か…。

総司はいいが、稲葉にこの時代で生き抜いていけるのか…。

それだけの覚悟はあるのか。

一人になった部屋で土方は考えていた。

一方、沖田が戻った部屋では桜夜が正座をさせられ、延々と沖田の嫌味が続いていた。