桜の下で ~幕末純愛~

その頃、沖田は土方の部屋に居た。

「桜夜がおかしいんです。何かありましたか?」

―早速勘付かれてんじゃねぇか―

「さぁな。四六時中見張ってる訳じゃねぇんだ。知らねぇよ」

「私が話すと直ぐに何処かに行ってしまうんですよ。さっきは平助と買い出しだって」

―平助と買い出しだと。外に出たのか、あの馬鹿が―

「桜夜の好きそうなお菓子を買ってきたのに」

―あいつ、逃げてるだけじゃねぇか―

「知らねぇもんは知らねぇよ。どうせ部屋が一緒だろ、そん時に食えばいいじゃねぇか」

―あいつの事だから先に寝た振りでもしちまいそうだがな―

沖田は納得いかない顔付きで土方の部屋を後にした。

その後も桜夜はただただ沖田から逃げていた。

夜になり皆自室へ戻る頃。

困った…二人きりはキビシイっ。

布団は沖田のいない間にナミが敷いておいてくれてある。

…やっぱ、先に寝ちゃおう。

桜夜は沖田が来ないうちに布団に入ってしまった。

暫くすると沖田が部屋へ入って来る。

襖に背を向けて既に布団に入っている桜夜。

話しかけないで、頼むからっ。

しかしいくらたっても沖田から声がかかる事はなかった。

あれ?逃げすぎて怒ってるのかな…。

桜夜はいつの間にか本当に眠ってしまっていた。

朝―桜夜が目が覚めると沖田は既にいなかった。

…やっぱり怒らせちゃったのかな。

その日の午前中は一度も沖田と顔を合わせる事がなかった。

そこに近藤とばったり会う。

「桜夜殿!聞いたぞ。大丈夫なのか?傷はどうだ?」

「はい。もう平気です。勝手な事をしてすみませんでした」

「もう、一人で出てはいけないよ」

近藤は優しく笑って桜夜の肩に手を置いた。

「はい。あっ、あの、総司を見ませんでしたか?」

まるっきり見かけないのも不安になるよ…。

「うーん。そう言えば見ていないな…。総司の事だから団子を食べに行ってるか。壬生寺で童と遊んでいるんじゃないか?」

……壬生寺?童?…花ちゃん!!

ま、まずい。お団子である事を祈ろう…。

その頃、沖田は子供達と遊ぼうと壬生寺に来ていた。

すると花の様子がどうもおかしい。

「花ちゃん?どうしました?」

沖田が聞くと、花は泣き出した。