桜の下で ~幕末純愛~

桜夜が庭先でボーっとしていると辺りが騒がしくなってきた。

帰ってきたんだ…。会いたいな。

ダメだ!逃げなきゃ!

痛みが消えれば普通に会えるから。

どこに逃げる?部屋はもちろん却下。台所?モロバレじゃん。

結局逃げる場所なんてない…。

とりあえず、ここでいっか。

しばらくすると一番聞きたくて、聞きたくなかった声がする。

「桜夜」

総司…。笑顔、笑顔。着物は前からあったのを着てるからオッケー。

ゆっくり振り返る。

沖田の顔を見ると自然と笑顔になっていた。

「おかえりなさい。お疲れ様」

「ただいま。こんなところに居たのですね」

「うん、ちょっと休憩。でも、もう仕事しなきゃいけないんだ」

自然だよね?普通に話しできてるよね?

「じゃあ、また後でね」

桜夜はとりあえず台所に向かって歩き出す。

沖田の視線に傷が疼く気がした。

ナミのところで簡単な手伝いをして台所を出る。

出たところで藤堂に会った。

「桜夜ちゃん、傷はどう?総司には会ったの?」

「傷は平気だよ。総司とはさっき少し話した。多分気付かれてないと思うけど」

藤堂と話しながら歩いていると向かいから沖田が来るのが見えた。

どうしてこうタイミングよく会うんだろう…。

「平助くん、暇?」

咄嗟に藤堂を誘う。藤堂は驚いた。

「そりゃ、今日はもう暇だけど…」

そこで沖田と会う。

「桜夜、まだ仕事ですか?」

チラッと藤堂を見て沖田が言う。

「あ、うん。買い出しに…。平助くんも買いたい物があるって言うから、一緒に行ってくれるって。一人じゃないから…いいでしょ?」

総司の目が見れない…。

「そう…ですか」

「ん、後でね」

―後で、ばかりですね…―

桜夜と藤堂は屯所を出た。

「なぁ、隠すっていうか逃げるって感じじゃねぇの?それって。しかも傷だって完治してないのに外に出て、土方さんに知れたら怒られるよ」

藤堂の言葉にドキッとする。

「うん…。分かってる。いけないよね」

「どうしたって、夜は二人だろ?逃げ道ないよ」

「それも分かってるよ…」

夜なんてこなきゃいいのに…とにかく先に寝ちゃおう。