桜の下で ~幕末純愛~

それからナミに晒を巻いてもらい、念のために鎮痛剤をのんだ。

あら?意外といけるじゃん。

腕を高く上げると少し響く気がしたが、普通に歩いたりする分には問題ない気がした。

久し振りに部屋から出る。

気持ちいい!

それから土方のところへ向かった。

「土方さん、居ますか?稲葉です」

「入れ」

桜夜が襖を開けると土方は机に向かっていた。

うわっ、何?この煙たい部屋!

思わず入るのをためらう。

「何してんだ。早く閉めろ」

「いえ。煙いんで、ここでいいです」

土方が眉間に皺を寄せた。

「ナミさんにサラシで締めてもらったら楽みたいです。ご迷惑をおかけしました」

「誤魔化しきれるとは思えねぇがな」

そうはっきり言われると…。

「はい。でもやってみます」

桜夜はゆっくりと正座をして土方を見た。

「助けていただいて本当にありがとうございました」

手をついて頭を下げる。

前傾姿勢になると傷口に少し痛みが走った。

土方は驚いた顔をする。

「それはもういい。お前もこっちの危険さは身を持って知っただろ。これからは勝手に行動するな。今回の事、近藤さんには報告するからな」

「はい」

「体を馴らせ。少し庭を歩き回ってろ」

そう言うと土方は机に向かい直した。

原田と藤堂、ナミにもお礼を言い、庭を回る。

日差しが眩しくなってきた。

夏が近いな。

総司に会ったらヘンに意識しちゃいそう。

そうだ!会わなきゃいいんじゃん!

久し振りだから顔、見たいんだけど…。

とにかく、今日は総司から逃げてよう。

出迎えはするなって言われてるから、意外と逃げ切れるんじゃない?。

桜夜は“隠す”というより“逃げる”決心をした。

沖田達が戻る時間が近付いていた。