桜の下で ~幕末純愛~

鎮痛剤のお陰なのか、時間が経つにつれ背中の痛みは我慢できる程になっていた。

もう付き添いはいらないと桜夜は断ったがそれでも土方、原田、藤堂、ナミは代わる代わる様子を見に来ていた。

心配してくれんのは分かるんだけど、落ち着かないよ。

翌日もまた翌日もそれが続く。

確かにまだ背中は痛いんだけど…もう平気なんだけどなぁ。

そろそろ土方さんが覗きにくるかな。

まるで決めている様に四人が順番に来るので、次は誰が来るのか分かってしまう。

「お桜夜ちゃん、どうだい?」

声と共に現れたのはナミだった。

あれ?外れた。

「はい。だいぶいいです。ナミさん、この時間って仕事は?」

「あぁ、何か大阪の方であったらしいと情報が入ってね。土方さんが頭を抱えていてねぇ。代わりに見に来たんだよ」

…大阪力士乱闘だ!

「そ、それで何があったの?」

「さぁねぇ。私にはよく分からないよ」

皆は…総司は無事なんだよね?

総司が帰るのはいつ?

桜夜は夜になってもなかなか寝付けずにいた。

朝になりウトウトしていると土方が入ってきた。

「どうだ?」

…大阪の事聞きたいな。総司は無事?

でもそれを聞いたら過去を知っていて止めなかったと責められる?

怖くて聞けない…。

「あ、はい。だいぶいいです」

「そうか。あぁ、お前には言っておくか…。大阪で奴等が騒ぎを起こしやがった。お前といいあいつ等といい、大人しくしてられねぇんだな」

…人を問題児みたいに言わないでよ。

「騒ぎって…」

「……お前には分かってたんじゃねぇか?」

「あ…」

やっぱり、ごまかせないか…。

「すみません」

怒鳴られる?責められる?軽蔑される?

桜夜は俯いて謝った。

「変えられねぇんだろ?」

「え?」

「俺等に教えちまったら歴史がかわっちまう。総司が言ってたぜ、未来は豊かで平和だったってな。お前が言えないのは仕方ねぇ。黙ってる方が辛ぇだろ」

土方はそう言うと少し笑った。

「土方さん…」

桜夜は思わず涙を溢す。

「なっ、泣くんじゃねぇよ」

思いがけない涙に土方が少し狼狽えた。