桜の下で ~幕末純愛~

一度はお粥に手を伸ばしたが、動かすと疼く背中に、お粥を食べ続けるのは無理だと思い、手を引っ込めた。

「口開けろ」

は?

「手ぇ動かすのが辛いんだろ。口開けろ」

あ…あ~んってやつ?ひじぃが?

「食わねぇのかっ」

怒りだしそうだし…照れてる場合じゃないよね。

恐る恐る口を開ける。

少し乱暴にお粥が口に入る。

どわぁーあっちぃ。

「あ、あふい…でふ。ひじから…はん」

そんな桜夜の顔を見て、土方が吹き出す。

「悪かったな、熱かったか」

「ひ…ひどい」

その後、桜夜は数口で疲れてしまった。

「ごちそうさま…でした」

「薬飲んで寝てろ。左之か平助をつけておく」

土方はお粥を持って部屋を出ていった。

ひじぃにあ~んって…。総司が知ったら…妬いてくれ…る?

私ってばこんな時に…今更、何を期待してるんだろう。

怪我して頭おかしくなってんだな、きっと。薬飲んで寝よう。

次に目を覚ました時には藤堂がいた。

桜夜の熱は下がった様で体のダルさは抜けていた。

「桜夜ちゃん、どう?」

藤堂が不安げな顔を向ける。

「ん…。だいぶ楽になったよ。ごめんね、迷惑かけちゃって」

「いいんだよ。それよりナミさんが着物、貰ってきたからって」

藤堂がナミから預かった着物を見せた。

「総司にどう言うかは別としてさ、流石に一枚じゃやってけないでしょ」

「うん。助かったよ」

桜夜は体のダルさが抜けたので、起き上がってみる事にした。

「平助くん、ちょっと起きてみたいんだけど。たすけてくれない?」

「えっ?やめときなよ、無理して傷口が開いたら大変だよ」

「無理しないから。ダメそうならすぐ寝るよ」

藤堂は渋々桜夜を脇を支えてゆっくり起こした。

いたた…。ん、でも大丈夫そう。

「ありがと。寝てるだけってのも意外と辛いね」

「でも、少ししたら横にならなきゃ駄目だよ」

心配そうに桜夜から手を放した藤堂。

「うん。あ、ねぇ、大阪の皆はどうしてるのかな?」

力士との乱闘は何日だったっけ。少し探りを入れてみる。

「さぁ。昨日の今日だしなぁ。」

変わりない藤堂の表情にホッとした。