桜の下で ~幕末純愛~

「ん?あれを取れ、か?」

土方の問いにブンブン縦に首を振る。

「開けて…もらってい…いです…か」

土方が風呂敷を開くと久し振りに見るバックに少し嬉しくなった。

土方からバックを受けとると片手でゆっくりファスナーを開き、鎮痛剤を出す。

「何だ、そりゃ」

「未来の…鎮痛…剤…です」

枕元にあった水と一緒に鎮痛剤を飲む。

ホッ。苦くない。

「いいもん持ってんじゃねぇか」

石田散薬飲まなかったから拗ねてんの?プッ、カワイイ。

「苦…くないで…すから…ね」

「ふっ、そうか。何か食えるか?ナミさんが粥を作くってくれてある」

食えねぇよ…。無茶言わないでよ…。

「明日に…します」

「そうか、なら寝ろ」

…ひじぃ、寝ろと薬飲めばっか。でも、ここに居てくれるんだ。不安な時に誰か居てくれるって安心する。

桜夜は再び目を閉じた。

翌朝、鎮痛剤が効いたのか熱は微熱程度に下がり、傷の痛みにも少し馴れた。

「起きたか?気分はどうだ?」

ひじぃ…ずっと居てくれたの?

「はい。だいぶ楽に…なりました」

「食えるか?何か腹に入れた方がいい」

確かに…楽になったらお腹空いたかも。

「少し…食べられる…かも」

「だったら食え」

土方が部屋を出ていく。

…総司にあれだけ言われてたのに、総司が出発した途端にこれだもん。

着物か…何て言い訳する?

はぁぁぁ。気が重い。

暫くするとほんわりと湯気の上がったお粥が運ばれてきた。

「ナミさんが作り直してくれたぞ」

桜夜の目の前に置かれたお粥。

…どうやって食べようかな。起き上がるのはキツそうだし…。と、とりあえず横向きになる?

布団の中でモゾモゾと始めると土方が布団をガバッと捲る。

さ…寒い。

「何…するんです…かっ」

「起き上がれねぇんだろ。横、向きてぇのか」

「は…はい」

土方は傷に触れないように桜夜の体を横向きにする。

「…ありがとう…ございま…す」

さて、ここからどう食べよっか。

ずっと腕を動かすって結構傷に響くし…。

ナミさんには悪いけど、食べるの止めとこう。

「やっぱ…食べられま…せん。ごめんなさい」