桜の下で ~幕末純愛~

桜夜が傷の痛みに耐えていると藤堂の声がした。

「桜夜ちゃん、入っていい?」

満足に声が出せない桜夜にナミが「どうするかい?」と聞き、桜夜が首を縦に振ると代わりに返事をしてくれた。

「いいそうですよ」

襖が開くと、原田と藤堂の顔が見える。

「災難だったな。痛むだろ?」

「ごめんな、俺がついてってやってれば、こんな事にならなかったのに」

二人は申し訳なさそうにしていた。

「左之さん…と平助…くんのせ…いじゃ…ないから。心配かけ…て…ごめんな…さい」

「痛いんだろ?いいよ、無理に話さなくてさ」

藤堂が桜夜の頭を撫でる。

桜夜は首を縦に振って少し笑った。

「しかし、総司が知ったらどうなるか分からねぇぞ。今のうちに言い訳でも考えた方がよさそうだぜ、俺等全員な」

原田の言葉に桜夜の目が見開いた。

「知らせ…ない…でっっ」

思わず立ち上がろうとする桜夜。

「いっ…たっ」

「ほらほら、無理しないで」

ナミが布団へ寝かし直す。

「そりゃ、俺等だって総司に知られないのが一番いいけど…なぁ、左之さん」

「あぁ。さっき土方さんも言ってたが、着物が一枚無くなってると勘のいい総司は何かあったって絶対気付くぜ」

ち…違う意味で殺される。

「とりあえず、総司が帰るまでに普通に歩ける様にならなきゃな。寝たままじゃ誤魔化し様がねぇよ」

原田がそう言うと

「それならお桜夜ちゃんをゆっくり寝かせてあげて下さいな」

と、ナミは二人を追い出した。

「お桜夜ちゃん、少し寝た方がいいよ。眠れそうかい?」

石田散薬のお陰なのか、馴れてきたのか、少し眠れそうな気がした。

桜夜は首を縦に振って目を閉じた。

どれくらい眠ったのか、痛みとダルさで目が覚める。

部屋には灯りが点され、外は暗くなっていた。

布団の脇には土方が座っていた。

「起きたか?やはり熱がでたな。薬、飲め」

ひじぃが居てくれたんだ。忙しいのに、悪い事しちゃった。

でも、あの薬は絶対ヤだ!あっ、カバンに頭痛薬がある!あれって沈痛解熱作用って書いてあったんじゃない?

桜夜は首を横に振ると部屋の端にある風呂敷を指差す。

ひじぃ、あれ取って。