桜の下で ~幕末純愛~

「さぁ、皆。今夜は思う存分呑んでくれ」

近藤の声を受け、皆は一斉に呑み始める。

うっわぁ。スゴイな…。歓迎会は建て前ってのホントだ。

その勢いに飲まれて唖然とする桜夜。

「桜夜、皆さんを紹介しますよ」

沖田の声にハッと我に返る。

「まずは副長ですかね」

副長?ひじぃじゃなくて?

「さっき言ったでしょう?山南さん。あの方も副長ですよ」

あれ?総長じゃなかった?新撰組とその前じゃ違うのかな…。しかももっと大人数のイメージがあったけど…

「山南さん」

沖田に呼ばれ山南は微笑んだ。

「桜夜をきちんと紹介しようと思いましてね」

「あぁ、あの時は随分と落ち込んでいた様子だったね。元気になったかい?」

わぁ、優しそうなお兄ちゃんって感じだぁ。

「はい、すみませんでした。もう平気です」

「そうか、それはよかった。困った時には助けになるから、何時でもおいで」

山南がそう言う後ろに三つの頭の山ができた。

「回る必要がなくなりましたね」

沖田が溜め息混じりに言った。

「その後ろ三名が桜夜の事を知っている残りの方々です」

「おい、おい。その紹介はないだろ、総司」

左之が口を開く。

「あの時は悪かったな。改めて原田左之助だ」

「何だ?左之。もう何かやらかしたのかよ。桜夜ちゃん、大丈夫か?」

「左之さん、何、抜け駆けしてんだよ」

えっと、どっちが永倉さんでどっちが藤堂さん?

「こちらが永倉さん、こちらが平助ですよ」

戸惑っている桜夜の様子を見て沖田が助け船を出す。

「原田さん、永倉さん、藤堂さん。宜しくお願いします」

「桜夜ちゃん、そんな堅っ苦しい呼び方しないでさ、平助でいいよ。皆そんな感じだし」

「そうそう、俺も左之でいいって。こっちは新八」

そ…そう言われてもなぁ。

「ま、皆さんそう言ってますし、気楽に考えて下さい」

「そーそー、桜夜ちゃん、呑もうぜ」

藤堂はそう言うと桜夜を引っ張って行った。

「桜夜に呑ませないで下さいよっ」

沖田の声が遠くに聞こえる。

そぉじぃ、助けてー。

歓迎会と名のついた単なる宴会はいつまでも続きそうだ。

桜夜は暫く三人に付き合っていたが、さすがに疲れが見えてきた。