桜の下で ~幕末純愛~

店を後にした沖田は屯所には戻らず、壬生寺へ向かった。

「ここは?」

「過去の壬生寺ですよ」

ここが壬生寺…。

するとどこからかたくさんの子供の声がした。

「あーっ。総司だっ」

「そーじぃー」

「どこ行ってたんだよ~」

子供の声?

声の先を探すと、小さな子供達がこっちに向かい手を振りながら走ってくる。

沖田も嬉しそうに手を振り返しながら笑っていた。

「よくここで子供達と遊んでいたんです」

子供達は沖田の足元に群がると早く遊ぼうと急かした。

「桜夜も遊びましょう」

そう言いながら子供達に手を引かれて境内の奥に消えていった。

へぇ~、総司って子供と遊ぶんだ。ちょっとイイ…かな?

すると誰かが桜夜の着物の裾を引っ張った。

ん?

下を向くと女の子がニコニコしながら立っている。

桜夜はしゃがんで「なあに?」と言った。

「お姉ちゃんは総司と恋仲なの?」

こいなか?

恋仲が分からずに困っていると上から声が降ってくる。

「彼氏なのかと聞いてるのですよ」

総司!?どっから現れたの?

「花ちゃんが来ないから迎えにきました」

楽しそうな顔の沖田。

「花ちゃん、皆待ってますよ。ほら、桜夜も」

沖田は二人の手を取り、境内の奥へと走り出した。

鬼ごっこ、かくれんぼ…日が傾くまで子供達と遊んだ。

夕方になると子供達は家路に着き、沖田と桜夜も屯所への道を歩いていた。

「さ、帰ったら夕食が待ってますね」

「あんだけ食べといて、まだはいるの?」

恐ろしい胃袋…。

「あれはデザートでしょう?夕飯は夕飯です」

そんな別腹初めてだよ。

屯所へ戻ると桜夜は夕飯まで部屋に居る様に言われ、沖田はどこかへ出て行った。

部屋で一人、桜夜はぼんやりと考える。

恋仲かぁ。付き合ってるって事だよね。

花ちゃんだったっけ?結局答えられなかったな。

…でも“違う”としか答えようがない…かぁ。

私は総司の何?

タイムスリップしたところにたまたま居た子?

知らない時代で世話してくれただけの子?

それとも…?

ううん、期待しちゃいけない…。

私の気持ちは?

私は一体どうしたいんだろう…。