桜の下で ~幕末純愛~

「だいぶ桜夜らしくなってきましたね」

「ん。昨日の夜はありがと。もう、大丈夫!」

はっ、そうだ。昨日の夜…。う゛~、恥ずかしいっ。

「いいえ。よく眠れたみたいですからね。しかし、桜夜はもう少し食べて成長した方がいいですよ」

沖田は桜夜の胸を指で差すとクスッと笑った。

「そっ、総司のバカっ!」

そんなやり取りをしながら近藤の部屋に着いた。

「近藤さん、沖田です」

と言うと同時かと思う位早く襖を開けた。

…声かけてる意味ないじゃん。

「おめぇは、返事を待ってから開けろ」

そこには土方もいた。

「またですか。よっぽど暇なんですね。私が現れる場所で待ち構えてるなんて、ストーカーですよ」

ぷっ。ストーカー。

桜夜は思わず吹き出してしまった。

「何がおかしいんだ。異国語みてぇなのはやめろって言ってるだろうが」

土方が青筋をたてる。

「近藤さん。桜夜は明日からナミさんを手伝います」

総司、ひじぃをスルーしたよ。いいの?

「ん?ナミさんの?女中という事か?」

「はい。だって土方さんの小姓って言っても、どうせ土方さんは桜夜に何もさせないでしょう?ナミさんとも気が合ったみたいですし」

うーん。と腕を組む近藤。

「あのっ、近藤さん。置いていただいてるだけじゃ気が引けます。少しでもお役に立てれば…。それに私も体を動かしていた方がいいんです」

「そうか。では、お願いするとしよう。しかし女中の仕事は意外と大変だぞ」

近藤は組んでいた手をほどき、人の良さそうな笑顔をした。

「途中で根ぇあげても、小姓には戻してやらねぇぞ」

土方が鼻で笑う。

ふんっ。戻んないもんっ。

「はい。ありがとうございます」

桜夜がお礼の言葉を終えると沖田は桜夜の手を取り、立ち上がる。

「では、桜夜も明日から忙しくなるので今日は桜夜と団子を食べに行ってきますね」

沖田はそう言うと、桜夜を連れて部屋を後にした。

「総司、お団子?」

甘党だったもんね。

「ええ。こっちのデザートも食べてみたいでしょう」

沖田は嬉しそうな顔をして屯所を出る。

「それに京の町も少し見たいでしょう?私が居るので危険はないですからね」

沈まない様に外に連れ出してくれた沖田の気持ちが嬉しかった。