桜の下で ~幕末純愛~

部屋に陽が入り、外が騒がしくなった頃に桜夜は目覚めた。

戻れてない…当たり前か。
布団に入ったままぼんやり考える。

いつまでもウジウジしてたって仕方ない!

まずは簡単にバレちゃったのを謝らなきゃね。せっかく秘密にして守ってくれるって言ってくれたんだもん。

ひじぃに謝るのはちょっとムカつくけどっ。

さぁ、江戸時代稲葉桜夜始動!

何かヤンキーみたい…

そう呟くと布団から飛び起きた。

っと…勝手に部屋を出てもダメかぁ。

とりあえず布団を畳み、意味なく正座してみた。

そう言えば、江戸時代の女の人ってどんな格好で寝るんだろ?

パジャマなんてないよね?

昨日は勢いのまま着の身着のまま寝ちゃったけど、起きたら総司居なかったし、結果オーライだった。

…にしてもお腹空いた。総司、来てくれないかなぁ。

腕時計を見ると10時を過ぎていた。

この際、ひじぃでもいいや。あ、ひじぃなら近藤さんがいいなぁ。

その時、外から声がかかった。

「おい、起きてるか?」

この声は…はぁ、ひじぃだ。

「はい」

桜夜が返事をすると襖が開いた。

「悪いが総司は巡察に出た。俺の小姓ってのは聞いてるな。とは言え、特にやる事はねぇ。大人しくしてろ」

土方はそれだけ言うと出ていこうとした。

え?それだけ?

「あっ、土方さんっ」

桜夜は土方を呼び止めた。

「何だ」

こぇぇ。呼ばれただけで睨まないでよ。

「迷惑かけないって言ったのに…簡単にバレてしまって、すみませんでした。それと、図々しい様で申し訳ないんですが、お腹空きました」

あぁ…すっごい嫌味とか返ってくんだろうなぁ。

「ありゃあ、仕方ねぇんだろ。腹が減ったか。ついて来い」

え?普通だ。それはそれで怖い。

桜夜は土方に連れられ台所に来ていた。

土方は女中に一言いうと

「食わせてもらえ」

と桜夜にも一言い、台所から出ていった。

えーっと…。それだけっすかぁ?

桜夜が土方の出ていった方を見て立ち尽くしていると、威勢のいい声が後ろからかかる。

「お桜夜ちゃんだろう?江戸から長旅、大変だったろうに。簡単な物しかないが、さ、お食べよ」

ホッ。何かいい人っぽい。よかった。

「はい。すみません。いただきます」

桜夜は素直に食べることにした。

腹が減っては戦は出来ぬって言うもんね。