桜の下で ~幕末純愛~

沖田は敷いた布団に寝る様に桜夜を促し、桜夜が布団に入ると沖田は灯りを消した。

「暗いね」

「怖いですか?」

当たり前にあった電気がどれ程便利な物だったか気付かされる。

「ん、少しね。でも馴れるよ」

沖田は少しだけ襖を開けた。

「電気には敵いませんが、月明かりも意外と明るいものですよ。」

ホントだ。自然の光ってこんなに綺麗だったんだ。

「桜夜が眠るまでは此処にいますから。安心して眠りなさい」

横になった桜夜の脇に沖田が座る。

いつの間にか規則正しい寝息が聞こえてきた。

―おやすみ―

桜夜が眠ったのを確認すると沖田は部屋を出ていった。

沖田がこれからの事を土方と話し終えると丑三つ時になっていた。

部屋に戻ろうとすると、庭先に一つの影を見付ける。

―桜夜―

「起きてしまったのですか?」

少し離れたところから声をかける。

「総司…。うん、疲れてるんだろうけどね。興奮してんのかな?」

「夜風は体に悪いですよ。私ももう休みますから、行きましょう」

桜夜がゆっくり歩いて戻ってきた。桜夜は裸足だった。

「いつからそうしていたのです?裸足じゃないですか。何をしているのですか、本当に風邪をひきますよ」

「あはは。履く物ないし…。素足って結構気持ちよかったよ」

「足を拭きましょう。待っててくださいね」

沖田は手拭いを濡らしに井戸へ向かう。

すぐに戻った沖田は桜夜の足を取ろうとする。

「大丈夫だよ。拭くくらいできるから」

桜夜は沖田から手拭いを貰うと足を拭いた。

「月ってこんなに明るかったんだね。びっくりした。」

傾きかけた満月を見上げて言った。

「月を眺めていたのですか?」

「うん。あっち…未来では月なんて気にした事なかったよ」

沖田の部屋に戻り、すっかり冷えてしまった布団に入る。

ヤバイ、ちょっと調子乗りすぎた?寒いっ。

ブルッと小さく震えると、ふいに背中に温もりを感じる。

後ろから沖田に抱き締められていた。

「こんなに冷たくなって。今日だけ特別ですよ」

今日は恥ずかしさより安心感が勝っていた。

桜夜はゆっくり意識を手放した。