桜の下で ~幕末純愛~

「おい、桜夜ちゃんはどうしちまったんだ?」

あ…ゆうげって知らなきゃヘンなんだ。はぁぁ。私、こっちでは喋っちゃいけない気がする。

沖田はクスクス笑っている。

「総司、笑ってねぇで。桜夜ちゃんは何者だ?」

「さて、どうします?桜夜。(嘘の)上塗りをしますか?それとも?」

笑いながら桜夜に聞く。

楽しんでるよ…絶対!

「私、口きかない方がいいね…」

すっかり項垂れてしまった桜夜。

それを見て一層笑う沖田。

「どっちがいいかなんて分かんないよ。嘘を突き通せば身を守るにはいいかもしんないけど…この先、こんな風に口を滑らさないって保証ないもん」

こんな事言ってる自分が情けなくなってきた。

俯いたままの桜夜の頭にポンと手を置き、沖田が言った。

「少し意地悪し過ぎましたね。すみません。実は、三人だけで桜夜を見るには無理があると思っていたところでなんす」

原田は訳が分からないという顔で二人を見ていた。

「私も巡察にでなければいけないですし、近藤さんも土方さんも桜夜に張り付いてばかりはいられませんからね。信頼できる数人には事情を話さなければと考えていました」

「…ごめん」

「今回は桜夜のせいではないでしょう?さ、そうと決まれば近藤さんに相談に行きましょう。左之さんも来てください」

そう言うと桜夜の手を取り、近藤の部屋へむかった。

「近藤さん、居ますか?沖田です」

「おお、総司か」

近藤の返事を受け、沖田が入る。

続いて桜夜と原田が入った。

近藤の部屋には土方もいた。

「まだ居たのですか?土方さん。暇なんですね」

「なんだ?もう知られちまったのか?そいつは」

…ごもっともで返す言葉がありません。

「まぁ、今回は仕方ないですね。そこでご相談にあがりました」

沖田は事情を説明し、何人かに協力して貰いたいと話した。

「うむ…そうするしかなさそうだな」

「ったく、おまえは阿呆か」

今回は言い返せない…。

口には出せないので心で抵抗する桜夜。

「では、幹部連中何人かに事情を話すとしようか。桜夜殿、気に病む事はない」

近藤は終始俯いていた桜夜の頭を撫でた。