桜の下で ~幕末純愛~

叫び声が響く数分前。

桜夜が着物を脱ぎ、沖田がしていたのを思い出しながら着ようとした―その時。

「おぅ!総司!帰ったんだな」

襖が勢いよく開いた。

お互いに暫く固まる…。

「あの…だな。着物を…」

「きゃあぁぁぁぁ~」

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沖田が直ぐに駆け付ける。

乱れた着物姿でうずくまる桜夜と立っていた男【原田左之助】を見て、一層険しい表情になった。桜夜と原田の間に立ち、刀に手をかける。

「腹の傷を増やしましょうか。あぁ、私が介錯して差し上げますからご安心を」

するりと刀を抜いた沖田の顔は怒りに満ちていた。

そこに近藤と土方も到着する。

「左之…お前」

「原田くん…」

「ご…誤解だ。俺は何もしちゃいねぇよ」

必死な顔で後退りした。

じりじりと沖田が間合いを詰めながら

「では、この状況をどう説明するのです?」

と、原田に聞いた。

そこに桜夜が着物を羽織り、手で押さえた状態で、口を挟んだ。

「あのっ、違うの。何かされたとかじゃなくて…。と…とりあえず、刀しまって」

桜夜に腕を掴まれ、沖田は渋々刀を収めた。

「着物、一人で出来る様にって練習してたら…急に開いて…その…」

「見られたのですか?」

ジロリと原田を見ながら聞く。

「………」

桜夜がなかなか答えないので、原田に問い質す。

「で?見たのですか?」

勢いに押され、シドロモドロになりながら

「い…いや。見てないって。白い肌なんて…」

ポッと少し赤くなりながら答えた。

「白い肌?…見ましたね」

再び刀に手をかけた。

本気で危険を感じた原田は脱兎の如く逃げ出した。

「待ちなさいっ」

「嫌だ。死にたくねぇぇぇ」

「返事も待たずに開ける左之さんが悪いのですっ」

沖田も追いかけて出ていってしまった。

「あの…どうしましょうか?」

「ま、殺られはしねぇだろ。それより、早く着ろ」

「え?あっ、はい」

近藤は横を向いたまま

「とりあえず、形になる様には着れるかい?後は総司が戻ったら手直ししてもらうといい」

そう言うと土方を連れて部屋を出ていった。