桜の下で ~幕末純愛~

沖田は再び近藤の部屋を訪れる。

「近藤さん、沖田です」

「あぁ、入れ」

返事をしたのは土方だった。

部屋に入るといきなり土方が切り出す。

「で、何を見てきたか話せ」

「車、自転車に新幹線。これ、乗り物ですよ。鉄の塊が凄い早さで動くんです!動物園に遊園地。コンビニも行きました。何より未来の甘味は素晴らしいです!私はシュークリームが一番気に入りました!あ、私、バイトもしたんですよ。それから…」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、総司。異国語か?それは」

近藤が目を丸くする。

「てめぇ、わざと言ってやがるな。真面目に答えろ」

土方はこめかみ辺りに青筋を立てていた。

「至って真面目ですよ。本当に知らないんです」

「どういう事だ?」

「美沙子さん、あ、桜夜の母上です。から固く禁じられていました」

「だからと言って調べる方法はいくらでもあるだろう」

土方は益々青筋を立てる。

「私が未来を知る事で、私達の危険を回避する事で、時代が変わってしまいます。未来は豊かで平和でしたよ。それを私ごときが壊してはいけません」

「「…………」」

「それに美沙子さん、綺麗な顔して怖いんですから。姉上以上です」

「「…………」」

「大体、私が偽る訳がないでしょう?」

「すまなかったな。しかし、ミツ殿より恐ろしいとは…」

「あはは。私もお役に立てずに申し訳ありません。一体何をしにタイムスリップしたのやら…」

「息抜きだろ。これから嫌でも気が抜けねぇからな」

それまで黙っていた土方が言う。

「ええ。贅沢させてもらいました」

外が騒がしくなってきた。皆、巡察から帰ったり、稽古を終えたのだろう。

「人気が多くなってきましたね。桜夜が心配です」

「あぁ、そうだな。総司が帰ったと既に知っている者も居るしな。今、総司の部屋に入られたら大事だ」

その時

「きゃあぁぁぁぁ~」

桜夜の悲鳴が響き渡る。

「桜夜っ!」

沖田は瞬時に駆け出していた。

「遅かったか」

「ちっ」

近藤と土方も続いて走り出した。