桜の下で ~幕末純愛~

着替えが終わったところで沖田が外で待つ二人を招き入れた。

「ほぅ。よく似合うな」

「……悪くはねぇ」

苦しーいっ。そんなに見られると恥ずかしいし。と言うより総司が…。

チラッと沖田に目をやると真剣な顔で黙り込んでいた。

「総司?どうしたの?」

「いえ。それより土方さんにお礼を」

―桜夜が欲しくなった。何て言えないでしょう―

「あ、あの…。着物、ありがとうございます」

「いや。出世払いだ」

げっ。有料かいっっ。

「はぁ」

とりあえずおとなしくしとこう。

「紹介が遅れたね。私は局長の近藤勇。こちらが副長の土方歳三だ。不便があればいつでも言っておくれ」

近藤は大きく笑い、土方の表情は変わらない。

「稲葉桜夜です。なるべくご迷惑かけない様にします。宜しくお願いします」

桜夜は頭を下げた。

「さて、今なら皆稽古や巡察に出ているから、あまり人目につかずに総司の部屋に行けるだろう」

近藤が辺りを見回しながら言う。

「総司は桜夜殿を案内したら戻ってくれないか。桜夜殿は退屈であろうが、暫く大人しくして頂きたい。夕餉の時にでも皆に紹介しよう」

ゆうげ?インスタント味噌汁?

「解りました。桜夜、行きましょう」

沖田の後ろを歩く。程なくして沖田の部屋であろう場所に着いた。

「ここですよ。近藤さんに言われた通り、暫くは大人しくしていて下さいね」

そう言うと、沖田はまた出て行った。

ここが総司の部屋か。何にもないな…。

沖田の部屋は殺風景という言葉が似合い過ぎる程、必要な物しかなかった。

桜夜は暫くは大人しく座っていたが、馴れない着物に何もない部屋。退屈を通り越し、窮屈になってきた。

「つまんない。つまんない。つまんなぁいっ」

大声は出せないので、ブツブツと呟く。

「あ、着物の練習でもしようかな。毎日総司に着せてもらうなんて、こっちがもたないよ。ま、崩れたら…総司にまた?あぁ、それもヤだな。でも、練習しないとどうにもならないもんね」

桜夜はブツブツ言いながら着付けの練習を始めた。

俄に外が騒がしくなってきていたが、然程気に止めなかった。