「わ…私は…どうすればいい…の?」

現実味のなかった“死”という言葉が突然現実味を帯びてくる。

震える桜夜を沖田はそっと抱き締めた。

「何も。ただ何も過去を語らなければいい」

沖田の温もりが桜夜の震えを止めた。

「どんな事があっても護り抜きます。桜夜は私から離れなければいいのです」

どこまでも優しく囁く。

沖田は桜夜の体を離すと

「さぁ、大丈夫ですね?」

と、頭を撫でる。

「…うん」

桜夜の返事を聞くと近藤と土方の方へ向き直し話し出した。

「お待たせしました。さて、何から話しましょうか―」

沖田は自身に起こった事の全てを話した。

近藤も土方も驚きと困惑を隠せない。

「―で、今度はこいつが“たいむすりっぷ”をしてきた―と言う事か?」

土方が始めに口を開いた。

「ええ。まさかこうなるとは…」

「しかし、おかしいぞ。総司が行方不明だったのはひと月だ。今の話では一年であろう?」

近藤が不思議そうに言う。

「ひと月?いいえ、確かに私は未来で一年過ごしましたよ」

押し黙ったままだった桜夜もひと月には驚いた。

総司といた一年が、幕末ではひと月だなんて…。

話が違うなんて斬られちゃったりってあるのかな?

その時、意外な人から助け船が出た。

「おかしかねぇだろ。天井に穴も開けずに人が降ってくるんだぜ。“たいむすりっぷ”とやらは。月日に違いが出ても不思議はねぇだろう」

それは土方だった。

沖田も意外だと、土方に顔を向ける。

「信じて頂けるのですか?」

「それしかねぇだろ。さっき、そいつと言い合いをしていた総司はまるで異国の言葉だった。そりゃ、“みらい”の言葉だろ。ひと月でそんなに流暢に話せる様になるとは思えねぇしな」

土方は少しだけ口の端を上げて言った。

「で…問題はそいつだ」

視線を桜夜に向けて土方は言葉を続ける。

「そいつはこの時代の経緯を知ってるんだろ。この事が知れたら―」

あぁ、やっぱり…斬られるのかな。

「口外できんな。そして桜夜殿は我々で護らなければならないね」

近藤が口を挟んだ。

「ああ」

土方も頷く。

「私、殺されない…の?」