桜の下で ~幕末純愛~

沖田と哲也が話をした次の日曜日。

バンッと桜夜の部屋のドアが開く。

「おい!桜夜。起きろよ」

哲也が桜夜を揺り起こす。が、全く起きる気配はない。

それを見ていた沖田が笑う。

「桜夜を起こすならこうするのですよ」

桜夜の鼻と口を塞ぐ。

「ぶはっ。そぉじぃっ。だからっ、やめてってば、それ」

ガバッと桜夜が起き上がった。

「ホントだ。すげぇな」

クスクス笑う沖田と感心している哲也。

桜夜は状況が飲み込めずにいた。

哲?

「んだよ。早く用意しろよ。出掛けるぞ」

は?

沖田はボーっとしている桜夜に近付き、耳元で囁く。

「哲くんがいる前で私に欲情されたくはないでしょう?早く用意なさい」

「―っ。すぐ支度しますっ」

真っ赤になった桜夜を見て哲は首をかしげる。

沖田はククッと笑い

「さ、哲くん、出ていましょう。ここに居たら桜夜が着替えられませんよ」

と、哲の背中を押して部屋から出た。

急いで着替え、リビングに行く。

沖田と哲也が待っていた。

「おっせーよ」

「…何で哲がいんの?つーかまだ7時半じゃん。今日、バイトないから寝たいんだけど」

―遡ること30分前―

ピンポーン

稲葉家のチャイムが鳴る。

美沙子が出ると哲也が立っていた。

「おばちゃん、オハヨ。総司と桜夜、借りていい?」

ズカズカと上がり込み、まずは既に起きていた沖田を驚かせた。

「総司っ。出掛けようぜ。どうせ桜夜は寝てんだろ、起こしに行くぞ」

―そして今に至る―

「私も何処に行くのかは知らないのです」

「ほれ、早く飯食えよ。でかけるぞ」

…総司と仲良くなってから、哲の雰囲気が変わった感じがする。

口が悪いのは変わらないけど。

哲也に急かされ、大急ぎで朝食を済ますとバタバタと家を出る。

どこに行くのかも知らされないまま、8時には出発していた。

そのまま駅に向かい電車に乗り込む。

たどり着いた先は隣県にある遊園地と動物園が融合した施設―ひかり動物公園―だった。