桜の下で ~幕末純愛~

テーブルにはご馳走が並ぶ。その中央にケーキを置いた。

「すごい量。食べきれないね」

「美沙子さん、張り切りすぎましたね」

二人で笑い合い、他愛のない話をする。

「桜夜」

突然沖田が少し畏まって声をかける。

「なに?」

「誕生日には贈り物をするのでしょう?」

「あぁ、プレゼントの事ね」

でも、総司には…無理だもんね。

すると桜夜の目の前に置かれた小さな箱。

「これ…は?」

「贈り物。プレゼントですよ」

総司から?どうやって?ヤバイ、感動して泣きそう。

「ありがとう。嬉しい。でも、どうやって?」

「実は美沙子さんにお願いして、少しだけ働いたのです」

これを買うために?私のため?

「開けてもいい?」

「勿論です」

桜夜は小さな箱のリボンをほどき、中を見る。

桜色の小さなピアスが輝いていた。

「わぁ!可愛い!ありがと」

「気に入っていただけましたか?」

「うん。すごく!つけてもいい?」

「はい」

総司からもらえるなんて思ってなかった。

最初で最後かもしれない…

桜夜の左耳で桜色の石が光った。

――――――

それからも変わりなく季節は進む。

気付くとクリスマス・正月…と過ぎていく。

沖田が元の時代に戻る事はなかった。

ただ、変わった事が二つ。

一つは哲也が頻繁に沖田を連れ出す様になった事。

もう一つは桜夜のバイトに沖田が迎えにくる様になった事だ。

そしてもうじき春がやってくる。

初めて桜夜に出会ってから、再び桜の咲き誇る季節が…。