桜の下で ~幕末純愛~

桜夜は家の前で待っていた。少し遠くに人影が二つ。

桜夜は沖田が帰ってきたと分かり、ホッとした。

沖田は家の前辺りの人影を見ると優しく笑う。

それを見た哲也は本当に負けたと痛感する。

「なぁ、総司も桜夜が好きなんだろ?どう見てもそうじゃんか。だったら何で付き合わないんだよ」

―時代がそうさせてくれないからです―

「各々、事情があるのですよ」

そう言って悲しげな笑みをこぼす。

「俺、難しいこと分かんねぇけど、総司なら桜夜を守れるだろ」

―護れたらどんなにいいか―

黙っている沖田に哲は言う。

「笑われるかもしれねぇけど…初恋なんだよ。幼稚園からずっと。高校もわざと同じにした。情けないよな。喧嘩ふっかけてばっかで。嫌われる様な事してんだ、俺」

―哲くんなら桜夜を任せられるでしょうね―

「それにしても、総司は強いな。また、相手してくれよ。桜夜は抜きで」

「いいですよ。早く強くなって、桜夜を護れる様になって下さいね」

―私はいずれ此処から消えなければならないですから―

「事情は知らねぇけどよ。んな事言うなよ。俺、総司結構好きだぜ」

そう話しながら歩いているうちに桜夜の待つ家に着く。

「じゃあな、総司。また相手してくれよ。約束な」

哲也は軽く手を上げて帰って行った。

それを見た桜夜は首をかしげる。

「仲良くなったの?」

沖田は苦笑いにも似た笑いをすると

「ええ。哲くんは良い子ですね」

哲が?ヨイコ?

桜夜はますます首をかしげた。

それを見た沖田はクスッと笑う。

「遅くなってすみませんでしたね。さ、お祝いしましょう。」

玄関に入ろうとしたところで美沙子が走って出てきた。

「お母さん?」

「桜夜、ごめんね。会社でトラブルが発生したって。なるべく早く帰るけど、総司くんと先に始めてて。ご飯は並べてあるし、ケーキは冷蔵庫よ」

美沙子はそのまま慌てて出てしまった。

仕方ないか…でも、今年は総司が居てくれてよかった。

あ、総司と二人?どうしよう、ヘンに緊張するかも。

「仕方ないですね。さ、お祝いしましょう」

沖田はそう言って家に入っていく。

桜夜もその後に続いた。