桜の下で ~幕末純愛~

沖田と哲也は小さな公園に来ていた。

―全く、桜夜といい哲くんといい、解りやすい方ばかりですね―

「何用です?」

先に口を開いたのは沖田だった。

「こばは桜夜の何だ?」

―何だと言われて答えられる関係ではないのですが―

―それよりも“こば”は、やめてほしいですね―

「“こば”は止めていただけますか?」

「じゃ、総司」

―それも嫌です。が、今回は仕方ないですか―

「総司は本当に親戚なのか?」

―違いますけどね。簡単には言えませんよ―

「どういう意味です?」

―少しは遊べるでしょうか―

「どういうって。お前ら見てると親戚の関係に見えねぇんだよ」

「貴方に何の関係があるのです?」

「なっ、何だっていいだろっ」

哲也は顔を赤くして大声をだす。

「とっ、とにかく、勝負しろ。俺、剣道やってたから強いぜ」

―全くもって意味のない勝負ですねぇ―

沖田はフッと笑うと

「で?私が勝ったらどうするのです?」

哲也は顔を更に赤くした。

「俺が勝つんだ!。そしたら桜夜に近づくなよ」

―また何の脈絡もない事を―

「桜夜の意思は?」

「んなもん、知らねぇよ」

―恋は盲目ですねぇ―

「では、私が負けたらそうして差し上げますよ」

ニヤリと笑い、沖田は竹刀を構える。

「も・し・も・負・け・た・ら、の話しですけれど」

「馬鹿にすんなよ!」

哲也は竹刀を振り上げて沖田に向かって行った。

―強いと豪語する割りに隙だらけですね―

―この平和な時代では仕方ないでしょうけれど―

するりと沖田にかわされ、哲也が体制を直すや、すかさず沖田の突きが腹に入る―寸前で止められていた。

「勝負あり。ですね」

「くそっ。あーっ、もーっ。好きにしろよ」

哲也は大の字になって転がった。

―本当に桜夜を好いているのですね―

沖田は哲也の前に立ち、手を差し伸べる。

「安心してください。私は桜夜の何でもないですよ」

哲也の手を持ち、立たせる。

「桜夜は総司の事が好きだろ?見てりゃ分かるじゃねぇか」

「それでも、何でもないんですよ」

―想いは伝えてはいけないのですから―