桜の下で ~幕末純愛~

薄暗くなってきた帰り道、沖田と並び歩いて帰ってきた。

家の前まで来たところで

「こばっ」

後ろから聞こえた声。

周りに人気はないので、あきらかに桜夜と沖田に向けられた声だと分かる。

こば?

振り返ると哲也が竹刀片手に立っていた。

…哲。…久々出たよ、お邪魔虫。しかも“こば”って何よ。

「何してんの?」

桜夜は哲也に言う。

哲也は竹刀をぶんっと振り、沖田に向けると

「おい、こば。勝負だ!」

…私の誕生日をぶち壊しにきたのか?こいつは!恨みを買う様な事はした覚えはないんだけど。

しかも総司に勝負って…勝てる訳ないっしょ。

「あのねぇ…。何アホな事言ってんの?しかも“こば”って何よ」

「小林だろ。だから“こば”だ」

あぁ、忘れてたわ。

しかし、歴史上の人物を“こば”と呼ぶのは史上初の快挙だね、哲。

「哲に付き合ってる時間、一生ないと思う」

そう言い、家に入ろうとした。

しかし沖田はその場を動かない。

「総司?」

「桜夜は先に入って下さい」

え?まさか勝負するの?

「総司。相手にしなくていいよ」

「いえ。申し込まれてしまいましたからね。あぁ、私の竹刀を持ってきてもらえますか?」

桜夜が不安そうな顔で沖田を見つめると

「大丈夫です。ちゃんと加減しますから」

そう言って桜夜の頭をポンと撫でた。

「堂々とイチャイチャすんなよ」

哲也がブツブツと文句を言っている。

桜夜は言われた通り、沖田の竹刀を取ってきて渡す。

「すぐに済みますから、お祝いは待ってて下さいね」

そう言い、哲也に連れられ薄暗い道に消
ていった。