桜の下で ~幕末純愛~

「桜夜、今日もバイトなの?誕生日くらいお休みしたらいいのに。女子高校生でしょ?普通はもっと何かあるんじゃないの?バイトばっかりじゃない」

「んー。別に予定がある訳じゃないし。ま、今日は早くあがるからさ」

そう言うと桜夜は出かけていった。

「バイト先にイイコトがあるのかしらね」

美沙子はチラッと沖田を見て言う。

美沙子がけしかけているのは分かる。それに踊らされてはいけない。が、沖田は落ち着かなくなってしまった。

―この私が振り回されるとは…美沙子さんには敵いません―

結局、沖田は桜夜のバイト先へ迎えに来てしまった。

桜夜のバイト先はこの辺りでは人気のあるカフェだ。

店に入る訳にもいかず、向かいの雑貨店の壁にもたれ掛かり桜夜を待つ。

カフェの中で沖田の姿に気付いた客が少しずつざわめき始めた。

それに同じバイト愛花が気付き、桜夜に声をかける。

「ね、桜夜ちゃん。あそこ見て。かっこよくない?」

桜夜が言われた方向を見る。

そっ、そっ、総司!?

何で?もしかして迎えに来てくれた?自惚れてもいい?

「ねぇ?彼女でも待ってんのかな~?あーあっ、遅番じゃなかったらなぁ」

愛花の話しなど聞こえもせず、沖田を見ていた。

桜夜の視線に気付いた沖田はニッコリと笑う。

「ちょっと、こっち見て笑ったよ。え~、あたしかなぁ~。ってか、桜夜ちゃん聞いてんの?」

「あっ。うっ、うん」

曖昧に返事をする。

そこに店長がやってきて、桜夜の頭をクシャっと撫でた。

「ほら。仕事、仕事」

「はっ、はいっ」

横目で沖田を見ると、眉間に皺を寄せて店長をみている。

こっ、こわっ。

30分程して桜夜のバイトが終わった。

桜夜は急いで着替え、裏口から沖田のところへ走っていく。

「総司!こんなとこで、どうしたの?」

「おかえり。桜夜を迎えにきたのですよ。誕生日でしょう。特別です」

―バイトの度に迎えに来る必要があるかもしれませんね―

チラリと店内の店長を見て「帰りましょう」と、桜夜の手を取った。