桜の下で ~幕末純愛~

季節は容赦なく巡り、何の手掛かりもないまま桜夜の誕生日が近付いていた。

「美沙子さん。少しよろしいですか?」

沖田は夕飯後に美沙子に話しかける。

「何かしら?」

「もうじき桜夜の誕生日と聞きました。誕生日には贈り物をするのでしょう?」

「ええ。今年はどうしようかしらね」

「私からも何か贈りたいのですが、何せこちらのお金とやらを持ち合わせてはいないので…」

元の時代に戻れるか、戻れないか…不安定な身で桜夜に形を残すのを躊躇していたのは事実。

しかし、純粋に桜夜の喜ぶ顔が見たかった。

「そう言えばそうねぇ」

「やはり、贈るからにはきちんと私から贈りたいのですが…」

沖田の相談に美沙子は自分が働いている会社で働かないかと提案した。

午前中のみの雑用だ。

それなら桜夜にバレる事なく、プレゼントを買うだけのお金は稼げる。

そして桜夜の誕生日の前日。土曜日だったので美沙子と一緒にプレゼントを選びに出掛けた。

幸い、桜夜はバイトに出掛けていた。

美沙子はジュエリーショップへ沖田を案内する。

「女の子はこういうの、大好きなのよ」

「何を選べばよいか…全く分かりません」

見たこともない光る石達を前に、沖田は困り果てた。

「そうね。ピアスはどう?」

ピアスコーナーに沖田を連れていく。

「あとは総司くんが選ばなきゃ。気楽に選べばいいのよ、要は気持ちでしょ」

沖田は端からゆっくりと見ていく。

ピンクの石の小さなピアスで目が止まる。

―桜色の石―

「ピンクダイヤね。可愛いじゃない?予算内に収まってるし」

小さな石が一つだけのシンプルなピアス。

小粒だったからか値段も手頃だった。

こうして無事に桜夜へのプレゼントを買う事ができた。

―桜夜は喜んでくれるでしょうか―

沖田は部屋に置かれた小さな箱を見つめた。