桜の下で ~幕末純愛~

桜夜の廻りを軽やかに風が吹き抜けると求め続けた声が聞こえてきた。



『全く…何をしているのですか?』

『第一声がそれ?』

桜夜が少し頬を膨らませる。

『そうでしょう?迎えに行くからいい子にしていなさいと言った筈ですよ』

『遅いよ。四年以上いい子にしてたじゃない』

『…仕方ないですね』

『もうっ、逢いたくなかった訳?』

『冗談ですよ。おいで』

『総司っ!』

桜夜は駆け出し、両手を広げた沖田に飛び込む。

飛び込んだ胸は逞しく暖かかった。

抱き締めた桜夜の髪を愛しそうに撫でる沖田。

桜夜が顔を上げ沖田に薬指の髪紐を見せる。

『もう、約束は破らないでよ?』

『勿論です』

沖田もまた髪紐が巻かれた指を見せ、桜夜の指に絡めた。

そして優しく見つめながら額に唇を落とす。

『おかえり 桜夜』

『ただいま 総司』



桜の木に凭れた桜夜の胸から二つの桜色の光が浮かび上がる。

二つの光は絡まり合う様にしながら空高く昇っていった。




         《 完 》